フォニックスの実践(1 アルファベットの読み)

フォニックス<綴りと発音の関係>

 前回の投稿ではフォニックスの概要について説明しました。Amazonなどで検索するとたくさんの種類の本が出版されていることが分かりますので、そういう本を参考にしていただければいいと思うのですが、もっと具体的に説明して欲しいという要望もありましたので、ここでは前回の投稿をもう少し具体的に展開したいと思います。

 初めに言っておかなくてはならないのが、このブログは、英語を習い始める年齢に達したお子さんをお持ちのお父さんお母さん(特にお母さん)で、学校時代に英語が少し、あるいは全くできなかったというお母さんをターゲットにしているということです。英語が得意だった、あるいは大学の英文科、英語科を出ていますというお母さんは対象にしていませんので、ここから先は読んでも時間の無駄になるかもしれません。でも、私の知らないことを言っているかも知れないわねって、少し興味を惹かれる方はどうぞそのままお読み続け下さい。多分、中学校、高校の英語教育では聞いたことのないことを言っていると思います。

 まず理解しなくてはならないのがアルファベットです。皆さんは中学校の最初の英語の時間、あるいはローマ字の時間にアルファベットを勉強したと思います。ところが英語の勉強ではこのアルファベットの読み方がほとんど役に立ちません。この辺りで「あれれー?」という疑問が頭に浮かんでしった人はそこでもう出遅れてしまっています。陸上競技の100m競争でスタートに失敗したみたいなものですね。実は英単語をアルファベット読みするということはごくごくまれなことで、しかも母音だけです。子音はアルファベット読みされることはありません。例外は短縮語ですね。WHO(国連保健機関)みたいな、頭文字を並べた省略語(acronym)にはアルファベット読みするのがあります。でもこれだけ。あんなに苦労して頭に叩き込んだのに、です。多くの文字はアルファベット式ではなく、フォニックス式で読みます。

 それから日本ではローマ字教育というものがあります。ある種の単語はローマ字を使って表しますのでこれは仕方がないことだと思います。ローマ字はあくまで日本語です。ところが、英語と同じアルファベットを使っています。英語の読みとローマ字で書いた言葉の読みは全く違うのにです。それで子供の頭の中はめちゃくちゃな状態になります。全く無関係なのですが時たま、「うーん」同じ?というのも交じってきます。homeは英語では「ホーム」ですが、ローマ字読みでは「ホメ」になります。ho-が「ホ」というところが同じなんですね。noteは英語では「ノート」ですが、ローマ字では「ノテ」です。これもno-の部分が同じです。matのようにローマ字読みできないのもあります。でも、無理やりローマ字読みすると「マット」になります。英語では「マット」で、何やら同じにも感じられますが、先生の発音を聞いていると最後の「t」の発音が若干違うみたいにも聞こえます。でも、mateのようにローマ字読みできるものは、英語では「メイト」で、ローマ字読みは「マテ」です。これでますます混乱に拍車がかかってしまいます。最初に、ローマ字は英語とは違う。単なる日本語だということをきちんと言い聞かせてから、お子さんに向かい合いましょう。以前は小学校でローマ字を練習して、ある程度分かってから中学で英語が始まったので少しはよかったのですが、今は英語の初歩とローマ字教育が小学校の4年生の辺りで同時にスタートするようですので、お母様はよくよく注意してください。

 では最初は母音です。母音とは、何か?これは、日本語の「あいうえお」に該当する文字です。アルファベットでは「a、e、i、o、u」(アルファベット順に並べました)です。これ以外に、母音同様に扱われるものがいくつかあるのですが、これについてはその都度説明します。母音のうちで、「eとi」は日本語とあまり変わりません。「a、o、u」は全く違います。 

aのフォニックス読み

 aのフォニックス読みは日本語とは全く違うと思ってください。aは最初は「e」の口の形(日本語のエ)で、だんだん口を大きく開けていき、「ア」の口の形にまで変化させます。この動作を一気に、まるで1文字であるかのように、一気に発音してください。これが「a」のフォニックス読みです。発音記号は/æ/となります。発音記号は「a」と「e」を一緒にしたような感じですが順番が違いますね。この発音記号をよく覚えてください。 

oのフォニックス読み

 oのフォニックス読みは要注意です。日本語の「ア」の2倍位大きな口を開けて、「ア」に近い感じで発音してください。発音記号は/ɑ:/です。「:」は伸ばす記号です。どれくらい伸ばすかはご自分の好みに合わせてください。伸ばさなくても構いません。実はこの「o」のフォニックス読みはアメリカ英語とイギリス英語で違っています。上の説明はアメリか英語です。日本の学校英語ではアメリカ英語が使われていますので、アメリカ英語で指導するのがいいでしょう。でも、ほとんどの英和辞典はイギリス英語です。イギリス英語では、口の形はアメリカ英語と同じですが、もっと喉の奥の方から日本語の「オ」に近い音を出します。この時少し口をすぼめてください。発音記号は/ɔ:/です。 

uのフォニックス読み

 uのフォニックス読みは、日本語の「ア」と同じくらい口を開けて喉の奥の方で鋭く「ア」と発音してください。発音記号は/ʌ/です。

 以上、母音の説明をしました。ただし、これはその母音にアクセントがあるときでアクセントが他の母音にあるときはアクセントのない母音はあいまいな音になります。母音があいまいな音になるときは発音記号は/ə/で、「e」をひっくり返したような記号になります。 

<子音の読み方>

 母音は読めるようになりましたので、今度は子音です。子音は母音のようにはっきりした音がありません。というか、日本語のカタカナで表現できるような明確な音ではありません。したがって、ここでカタカナの説明をすると大抵間違った説明になってしまうのですが、日本人にはカタカナを使わないと中々分かってもらえないという問題があります。できるだけカタカナを使わないようにしますが、どうしてもカタカナを使わないと分かってもらえない場合もありますので、そういう時は使わせてもらいます。まず始めは、口の形(舌の使い方も)が同じで、喉鳴らさないか喉を鳴らすかの違いという子音のセットからです。喉を鳴らすということは声帯を震わすということで英語の音声学では有声音といいます。声帯を震わせないのは無声音です。 

pとb:スイカの種飛ばしの要領で

 pとbはスイカの種を飛ばす時の要領です。上唇と下唇を強くくっつけて口の中に息をためてそれを強く吐き出してください。この時pは声帯を震わしません。bは声帯を震わせて喉を鳴らしてください。

kとg:喉の奥で音を吐き出す要領で

 kとgは口の形が同じです。下の根元を喉の天井の柔らかい部分に当てながら息を吐き出してください。この時、声帯を震わせないのがkで、声帯を震わせるのがgの音です。gの音は、文字がcの時でも使われます。cの後ろに母音の「a、o、u」が続く時はcはkの音です。母音の「e、i」が続く時はcはsの音になります。cの後に子音が続く時は決まっていませんが、kの音の方が多いようです。単語の最後が-icで終わっている時のcの音はkの音になります。 

tとd:舌を口の天井にくっつけて離す時に出る音

 舌先を尖らせて口の天井の歯茎に近い部分に舌を押し当てます(ここまでは、Lと同じですので覚えておいてください)。その後、その舌を離す時に音を出します。声帯を震わせないのがtで、この時声帯を震わすのがdです。Lについては後で説明しますが、舌を天井に強く押し当てた状態で音を出します。

  

fとv:上の歯を下唇にそっと押し当てるように

 上の歯を下唇に押し付けてというのが教科書通りの説明らしいですが、そんなことをしていると話がスムーズにできませんので、軽く触れる程度にして下さい。これは絶対に実行してください。これを怠ると聞いている人に誤解されることが非常に多くなります。自分はvと言ったつもりでも、聞いている人にはbと聞こえてしまいます。声帯を震わせないのがfで、震わせるのがzです。

  

sとz:遠くまで響き渡る音

 sとzは遠くまで響き渡ります。恥ずかしがり屋の日本人が一番不得意とする音です。朝の朝礼の時間に校長先生が訓話を始めると、どこかでひそひそ話が聞こえてきます。この時、間髪を入れずに教頭先生が唇に人差し指を当てて「シー!」とやります。あの音が「s」の音です。歯茎と下の間に狭い空間を作り、そこに強い息を吹きかけてください。口はややとがり気味にしましょう。摩擦音が出ます。この時声帯を震わせてはいけません。声帯を震わせるとzの音になります。

 

m:鼻から息を出す

 mは鼻から出す音です。唇を閉じて「ンー」とうなるように声を出します。そうすると、口が閉じられていますので、息は鼻に抜けることになります。この時の音がmの音になります。

 

n:口と鼻から抜ける音

 nも鼻から抜ける音ですが、mと違うのはnの場合は口からも鼻からも出る音の合わせた音です。舌を口の天井に当てて口を若干開き気味にしてください。この状態で息を吐き出します。すると、口からは舌の横の隙間を通って抜け、同時に鼻からも息が抜けて行きます。この時の音がnの音です。

 

L:日本語にない音

 Lの音は日本語にはありませんので、馴染みのない音です。口の形はt、dとほとんど同じですが、t、dは舌を口の天井の歯茎近くに押し当てて離す時に出す音ですが、Lは押し当てている状態で音を出します。息は舌の両側面を通過します。決して「ル」などとは言わないでください。しいて言えば「ウ」と押し出す感じです。

 

R:日本人が不得意な音

 rの音は日本人の不得意な音として昔から有名です。日本人は「ラリルレロ」という時に舌が口の天井についています。天井に舌が当たらないように注意して「ラリルレロ」と言ってください。これがrの音です。どうですか。簡単ですね。

 

x:k+sか、g+z

 xの音は語尾に来るとき、あるいは子音が続く時はk+sの音になります。ところが、xに母音が続き、しかも子の母音にアクセントがある場合はg+zとなることが多いので注意してください。kとg、sとzの口の形が同じだということが関係ありそうだなとピンと来た人もいるかもしれませんね。子音の練習をした時に声帯を震わせるか震わせないかで有声音と無声音があるということを学びました。でも、母音の時はそういう話はしませんでした。そして、子音の時はカタカナを当てるのは難しいという話をし、母音の時はそういう話をしませんでした。つまり、母音のフォニックスには音があるんです。しかも、カタカナを割り当ててもあながち無理がないような音が出ているということですね。つまり、母音は有声音なんです。つまり、xに有声音である母音が続く時はxも有声音で読んだ方がしっくりするという訳なんです。このことは後で名詞を複数形にする時や動詞の三単現の時につけるsの読み方などにも関係してきますのでよく覚えておいてください。climax(頂点)は「クライマックス」と読みます。exclaim(興奮して叫ぶ)は「イクスクライム」です。ところが、xの後ろに母音が続き、その母音にアクセントがあるときはg+zとなることもあります。例えば、exact(イグザクト=正確な)、exam(イグザム=試験)、example(エグザンプル=例)などです。

hは腹から出す音

 寒い日に手にハァーっと息を吹きかけて温めた経験はありますよね。その時の音がhの音です。いま、ハァーと書いてしまいましたが、実際はハァーとは言っていないと思います。単なる息の音ですね。腹から出すことが肝心です。hには基本的に音はありません。欧米語ではhを読まない言語が多いのはそのためかも知れませんね。英語では後ろに続く母音の影響で音が作られます。

 

j:2段階で発音

 jは2段階で発音します。と言ってもスムーズにやってくださいね。最初に舌の前半部を天井につけて離すタイミングで息を破裂します。

まだ終わりではありません。舌と口の天井の間に少し隙間が生じますので、更にここでも音を出します。この時口をちょっと尖らせるといいでしょう。これの2つの一連の動作を一気にやってください。これがjの音です。この時、声帯を振動させます。発音記号は/ʤ/です。

 

w:思いっきり唇を前に突き出す

 wの音を出す時は唇を丸めて思いっきり前に突き出します。反動で元に戻るときに、喉の奥から声を出しましょう。この時の音がwの音です。

 

qu:qとuはセットで

 qは単独で使われることはほとんどありません。手元に英語の辞書があったらqのところを調べてみてください。外国語由来のいくつかの語(例えば;Qantas=オーストラリアの航空会社、Qatar=カタール:中東の国家)と、頭文字をとった略語以外は、すべてqu-で始まっています。quはk+uで、uの発音はwです。kとwの音を連続して出してください。ただし、queue(キュー;列、列を待つ)のように例外もあります。 

y:ィヤ

 舌を目いっぱい持ち上げてから下げるときに音を出してください。唇は左右に少し広げるといいでしょう。日本語で「ィヤ」(嫌)という時の音です。「ィ」は小さいことに注意してください。アクセントは後ろの「ヤ」に置いてください。ただし、この「ィヤ」は連続して発音してくださいね。それから紛らわしいのでよく覚えておいてほしいのですが、yの発音記号が/j/だということです。

 

y:母音としてのy

 yには母音としての役割もあります。母音として「アィ」と読む場合と、「イ」と読む場合があります。アイと読む場合としてはfly(フライ:飛ぶ)、fry(フライ:油を使って加熱調理する)、cry(クライ:泣きさけぶ)、style(スタイル:様式、方法)などが、イと読む場合としては、system(システム:制度、組織)、rhythm(リズム:調子)、crystal(クリスタル:水晶)などがあります。 

柔らかいcと硬いc

 やれやれとうとう終わったかと思った方もいると思いますが、実はまだあるんです。cがまだ終わっていません。cにはkの音とsの音があります。cに「a、o、u」が続く時は、cはkの音になります。cに「e、i」が続く時にはcはsの音です。子音が続く時は、1つ1つ落穂ひろいのように覚えていく必要がありますが、kの場合がほとんどです。特に語尾で-icと続く形容詞の場合はkの音です。 

柔らかいgと硬いg

 とうとう終わったと思った方残念でした。もう一つありました。gにはcと同様の使い分け規則があります。gの後ろに「a、o、u」が続く時は、gの音で、「e、i」が続く時は、jの音になります。発音記号は既にjのところで紹介しましたように/ʤ/です。

 最後にあと一言。子音のところで発音記号を紹介していないものは、アルファベットの文字がそのまま発音記号となっています。

タイトルとURLをコピーしました